OH! 犬のふぐり

~どんな映画でもおすすめポイントを見つけていきます~

『カポーティ』 彼の血は温かいのか

 作家トルーマン・カポーティが、新たなジャンルを切り拓いたノンフィクション小説『冷血』(原題:In Cold Blood)を書きあげるまでの取材活動や彼の心の動きを描いた映画『カポーティ』。

 

個人的満足度:85/100点

f:id:tamakin_of_left:20140202192910j:plain

 

あらすじ

彼はカンザス州で起きた殺人事件に、作家として興味を持った。

 

ネタバレ無しおすすめポイント

①快演or怪演

 クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』を語るとき、誰もがジョーカー役のヒース・レジャーについて話さずにはいられないでしょう。映画『カポーティ』を紹介する上で、トルーマン・カポーティ役を演じるフィリップ・シーモア・ホフマンの快演(第78回アカデミー賞 主演男優賞等、多数受賞)はこの映画を見て欲しい! と思う一番のポイントです。

 

②エンドクレジットが流れる時間

 「何よりも君の死を恐れ、誰よりも君の死を望む」 何故、カポーティは真逆のことを同時に思うのでしょう。エンドクレジットが流れるのをぼーっと見ながら「この映画は何を伝えたかったのか」と考えてみる時間は、映画の楽しさのひとつではないでしょうか。

 

 ベネット・ミラー監督作品『カポーティ』、評価が分かれる映画かもしれませんがおすすめしたい一本です。

 

 

 

冷血 (新潮文庫)

冷血 (新潮文庫)

 

 

 

 

 

 

 ↓ 続きはネタバレ有り感想&レビュー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幼馴染、相棒

 カポーティの無邪気な子供っぽいような振る舞いと、キャサリン・キーナー演じるネル・ハーパー・リーのカポーティを見守る優しい目が印象的でした。

 「助手とボディガードを任せられるのは君だけさ」と言うカポーティの信頼や親しみから出たセリフは、ネルのキャラクターとカポーティとの関係性を理解させてくれます。刑事アルヴィン・ドューイ(クリス・クーパー)の妻と仲良くなり、家に招待してもらったときの「刑事の懐に入れた」と喜ぶ二人の様子も微笑ましい。

 

友人であり、作家でもある

 『冷血』を書いた後、長編小説を完成させることが無かったトルーマン・カポーティ。彼とペリー・スミス(クリフトン・コリンズ・Jr)との間には「作家と殺人犯」という関係と、幼い頃に家族に捨てられたという「共通する境遇を持つ者同士」という二つの関係がありました。

 カポーティにとってペリー・スミスは単なる取材対象ではなくなっていき、違う人生を歩んだ自分を見るような気持ちを持ち始めたのではないでしょうか。「彼とは同じ家に育ち、彼は裏口から出ていき僕は表玄関から出て行ったという違いさ」、このセリフにはカポーティが感じているペリーと自分との「近さ」が表れていると思います。

 

冷血の矛先

 ペリーに作家としての興味を持ち、友情をも感じはじめたカポーティは、ついに話し始めた彼の殺害動機、「動機は金…凶器を持っていた…」などの凶悪な殺人鬼としては平凡な動機に失望しながら、自分の作家としてのエゴにも苦しめられたのでしょう。

 ノンフィクションであるがゆえにペリーという主人公は理想的ではなく、彼が求めた動機の意外性も凶悪な本性も持ち合わせていなかったのです。

 初め残忍な犯罪者に対してつけたはずの「冷血」というタイトルは、刑事に皮肉られたように、作家としてのエゴでペリーと接するカポーティの人間性を表し始め、彼を苦しめたのでしょうか。