『バベル』 えー、左から偏見、偏見、偏見、ひとつとばしてそれは先入観です。
菊池凛子、ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェットなどが出演するアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の映画『バベル』を紹介します。
個人的満足度:59/100点
あらすじ
昔々、神様は天まで届く塔を建てようとした人間に怒り、人の言葉をバラバラにしました。――そして現代、言葉は届くでしょうか。
ネタバレ無しおすすめポイント
①意見が分かれる
レビューサイトを見てまわったところ、かなり「面白い」と「つまらない」というレビューで分かれています。だからこそおすすめ映画です! キーワードやキーポイントにする「何か」がこれまたかなり人それぞれになっていまして、映画の見方も大分違っています。
注意点
強い光の点滅をともなうシーンがあり、光過敏性発作により吐き気や気分を悪くする可能性がある。
・光過敏性発作について
DVD裏などにも書いてありますが、視聴する場合には十分注意してください。
↓ 続きはネタバレ有り感想&レビュー
本物の化け物を見せてやる
チエコ(菊地凛子)のモンジャラ(本物の化け物)を見てしまいました。高校生役にしてはちょっと年齢がいきすぎではないか、と思いました。
父親のヤスジロー(役所広司)とうまくいっていないチエコ。歯医者の顔を舐めたり、警察官のケンジ(二階堂智)の前で裸になったり。
言葉は届くのか
古代のバベル
旧約聖書創世記11章に書かれた「バベルの塔」の話をモチーフにした映画『バベル』。旧約聖書では「神は人間の自己神格化の傲慢を憎み、人々の言葉を混乱させ、バベルの塔の工事を中止させた」とあります。言葉が通じなければ、巨大な塔を建てるような大工事は行えない、人々は協力することができない。
言葉の壁は問題か
旧約聖書から考えると、映画からは「言葉の壁が人々を隔てている」という問題提起があるだろうと推測しました。しかし、見ているとそうではない、むしろ言葉が通じている二者間でこそ問題を抱えていると感じました。
①モロッコの羊飼い親子と地元警察。(アラビア語?)
②リチャード(ブラッド・ピット)とスーザン(ケイト・ブランシェット)というアメリカ人夫婦と同じバスに乗っていた他の旅行者達(もしくは英語が通じる旅行者達)。
③メキシコ人の乳母アメリア(アドリアナ・バラーザ)とその甥のサンチャゴ(ガエル・ガルシア・ベルナル)などの車に乗った4人とアメリカ側の国境警備の警察官。どちらも英語で話します。
④聾唖であるチエコとその父親ヤスジロー。ヤスジローは聾唖ではないが、二人は手話で問題なく意思疎通できる。
言葉の壁は越えられる
アメリカ人夫婦とモロッコ人の医者らは英語を話せるモロッコ人バスガイドによって意思疎通ができる。バスガイドの母親はスーザンに対して言葉を発さずにその親しみと優しさを伝えた。
チエコは読唇と筆談によって手話がなくとも人と意思疎通ができる。
現代のバベル
アメリカ人夫婦のもとにすぐに救急ヘリが来ないのは「言葉の壁」のせいではなく、モロッコ政府とアメリカ政府の政治的問題である。リチャードと旅行者達の間に共通意識を持てないのは、リチャードはモロッコ人に頼るほかなく、アメリカ人旅行者達には見知らぬ土地とそこに住むモロッコ人への恐怖があるからでしょう。
映画『バベル』では「言語の壁が人々を隔てている」のではなく、言葉が通じる間でこそ、その先入観と偏見によって問題を抱えています。
モロッコ人バスガイドの母親とスーザン、マイク(ネイサン・ギャンブル)とデビー(エル・ファニング)らアメリカ人の子供二人とメキシコの子供達。彼らは言葉が通じずとも心が通じ合ったと言えると思います。
他の関係はどうでしょうか。「言葉の壁」はありません。
それにもかかわらず問題を抱えています。
言葉は、届きます。